「より良いものを、より安く」このワードに見る改善の本質

ものづくり

「より良いものを、より安く」このワードに見る改善の本質

来ました。

来てしまいました。

「より良いものを、より安く」

この短いワードに、製造業における改善の本質が詰まっています。

「そんなん当たり前やろ!」

と突っ込んだそこのあなた。

間違ってないです。

むしろ正解です。

ただ、この当たり前を愚直に考え、改善し続けられる企業が明日の世界を変えるのです。

製造業では毎日のように、

「もっと品質を上げよう」

「もっと生産性を上げよう」

「もっと原価を下げよう」

と改善活動が行われています。

でも、これらを突き詰めていくと、結局目指しているところは同じです。

より良いものを、より安く、より早くお客様へ届けること。

この記事では、この一見当たり前に見える言葉から、製造業における改善の本質を考えていきます。

「より良いものを、より安く」ってどういう意味?

言葉通りですね。

今よりも品質の良いもの、機能性の良いものを、安く作って早くお客様へ提供する。

つまりこういうことです。

……。

よくわかんないですよね。

もう少し分解してみましょう。

  • 品質の良いものを作る ← わかる
  • 機能性の良いものを作る ← わかる
  • 早く作る ← わかる
  • 安く作る ← う、うーん……

こんな感じではないでしょうか。

特に難しいのが、

「安く作る」

という部分です。

言葉にすると簡単ですが、実際にやろうとするとこれがめちゃくちゃ難しい。

「安く作る=品質を落とす」ではない

たとえば、製品を安く作るだけなら方法はいろいろあります。

安い材料へ変更する。

検査項目を減らす。

設備のメンテナンス費用を削る。

人を減らして、残った人に頑張ってもらう。

確かに一時的にはコストが下がるかもしれません。

でも、その結果として不良が増えたり、設備が故障したり、納期が遅れたりしたらどうでしょう。

それは改善とは呼べません。

ここで大切なのが、

「安く作るとは、安いものを作ることではない」

ということです。

品質や機能を落とさず、できれば今より良くする。

生産スピードも落とさない。

安全性も犠牲にしない。

そのうえで、今より安く作る。

……無茶言うなよ。

と思いますよね。

でも製造業の改善では、この無茶に挑み続ける必要があります。

では、どうやって安く作るのか?

ここからが改善の面白いところです。

品質を落とせない。

機能も落とせない。

生産スピードも落とせない。

だったら何を減らすのか?

答えは、

「ムダ」です。

製造現場にはたくさんの「ムダ」が潜んでいる

普段当たり前のように行っている作業でも、よく観察してみるとムダはたくさんあります。

たとえば、

「部品が来るまで作業者が待っている」

「必要な工具を探している」

「部品を何度も持ち替えている」

「離れた場所まで部品を取りに行っている」

「不良が発生して手直ししている」

「機械が止まるたびに人が復旧している」

「人がひたすら同じ単純作業を繰り返している」

こういった作業に一つひとつ疑問を持つことが改善のスタートです。

「これ、本当に必要?」

この視点がめちゃくちゃ重要です。

10秒のムダをバカにしてはいけない

たとえば、ある作業で部品を取りに行くために10秒歩いているとします。

「たった10秒じゃん」

と思うかもしれません。

でも、その作業を1日500回やっていたらどうでしょう。

10秒 × 500回。

それだけで5,000秒です。

約83分。

1年間続ければ、とんでもない時間になります。

しかも、その83分間に製品の価値が上がっているでしょうか?

歩いているだけなので、基本的には上がっていません。

だったら、

「部品を作業者の近くに置けないか?」

「自動で供給できないか?」

「そもそも部品を取りに行く工程自体をなくせないか?」

と考える。

これが改善です。

派手な最新設備を入れることだけが改善ではありません。

今まで当たり前だと思っていたことを疑い、ムダを一つずつ消していく。

これが「より安く」への第一歩です。

改善の本質は「人を頑張らせること」ではない

ここは個人的にかなり重要だと思っています。

生産性を上げると聞くと、

「もっと早く作業しよう!」

「手を止めるな!」

「あと10個作ろう!」

みたいな方向へ行ってしまうことがあります。

でも、それでは人が頑張っているだけです。

もちろん作業者の習熟によって生産性が上がることはあります。

しかし、人の頑張りだけに依存した改善には限界があります。

人間なので疲れます。

集中力も落ちます。

ミスもします。

そして何より、

改善とは、本来もっと楽に同じ成果を出せるようにすることです。

100の力で100個作っていたなら、

120の力で120個作るのではなく、

80の力で100個作れる方法を考える。

そして余った20の力を、別の価値を生み出す仕事へ使う。

これこそ改善ではないでしょうか。

そこで「自働化」が強力な武器になる

ムダを徹底的に減らしていく。

その中で必ず出てくる疑問があります。

「これ、人がやる必要ある?」

ここで登場するのが自働化です。

単純作業を機械やロボットへ任せる

たとえば、

部品を運ぶ。

部品をセットする。

ネジを締める。

製品を箱へ詰める。

決められた場所へ置く。

同じ動作を何百回、何千回と繰り返す。

こうした定型作業の中には、人でなければできない理由がないものもあります。

だったら、機械やロボットに任せればいい。

人が行っていた作業を自働化できれば、その工程に張り付いていた人を別の仕事へ回すことができます。

これが省人化です。

ただし、ここで勘違いしてはいけません。

「人を減らすこと」そのものが目的ではありません。

人にしかできない仕事へ、人を移すことが重要なのです。

人間には人間にしかできない仕事がある

ロボットは同じ作業を繰り返すことが得意です。

疲れません。

同じ動作を何時間でも繰り返せます。

一方で、人間には別の強みがあります。

「この作業、やりにくいな」

「ここで不良が多いな」

「この設備、最近ちょっと音がおかしいな」

「こうしたらもっと早くできるんじゃない?」

そうやって考えることができます。

だったら、

単純な繰り返し作業は機械へ。
考えて価値を生み出す仕事は人へ。

こうした役割分担を進めた方が、工場全体として生産性を高められます。

自働化のメリットは人件費削減だけではない

「ロボットを入れて省人化する」

という話をすると、どうしても人件費削減に注目されがちです。

もちろん、それも大きなメリットです。

でも、自働化の効果はそれだけではありません。

品質を安定させられる

人が作業すると、どうしてもバラつきが発生します。

経験者と新人。

疲れているときと元気なとき。

作業開始直後と終了間際。

人間である以上、完全に同じ作業を繰り返すことは難しいです。

一方、適切に設計された自動設備なら、決められた条件で同じ動作を繰り返せます。

つまり自働化は、

「安く作る」だけでなく「より良いものを作る」ことにもつながる

ということです。

生産スピードも安定する

同じことは生産スピードにも言えます。

人作業では、その日の状況によって作業時間が変わります。

自働化された設備なら、基本的には決められたサイクルで動き続けます。

生産時間が安定すれば、生産計画も立てやすくなります。

つまり、

品質を安定させながら、早く、安く作る。

「より良いものを、より安く」に近づいていくわけです。

ただし「何でも自働化すればいい」わけではない

ここまで読むと、

「じゃあ工場全部ロボットにすれば最強じゃん!」

と思うかもしれません。

残念ながら、そんなに簡単ではありません。

ムダな作業をそのまま自働化してはいけない

これは自働化を考えるうえで非常に重要です。

たとえば、人が部品を10メートル運んでいる工程があったとします。

そこで、

「人が運ぶのはムダだからロボットに運ばせよう!」

と考える。

一見すると立派な自働化です。

でも、その前に考えることがあります。

「そもそも10メートル運ぶ必要ある?」

設備配置を変えて1メートルにできるなら、その方が圧倒的にシンプルです。

場合によっては運搬自体をなくせるかもしれません。

ムダな工程をそのまま機械へ置き換えても、

ムダが自動になっただけです。

まず工程そのものを改善する。

ムダを減らす。

シンプルにする。

そのうえで、残った必要な作業を自働化する。

改善 → 自働化

この順番が重要です。

「より良いものを、より安く」は終わりのない活動

品質を10%改善した。

生産時間を5秒短縮した。

一人分の作業を自働化した。

そこで改善が終わるでしょうか?

終わりません。

なぜなら、

「より良いものを、より安く」にはゴールがないからです。

今日100円で作っているものを90円で作れるようになった。

だったら次は85円で作れないか考える。

不良率を1%から0.5%にした。

だったら次は0.1%を目指せないか考える。

サイクルタイムを60秒から50秒にした。

だったら45秒にできないか考える。

改善した瞬間、その状態が新しい「当たり前」になります。

そしてまた、その当たり前を疑う。

これを繰り返していく。

だから改善には終わりがありません。

改善とは「今の当たり前を疑うこと」

「より良いものを、より安く」

改めて見ると、本当に当たり前の言葉です。

でも、この言葉を本気で実現しようとすると、

品質。

コスト。

生産性。

設備。

物流。

人の動き。

自働化。

工場に存在するあらゆるものを見直す必要があります。

そして、そのスタート地点にあるのは難しい技術でも最新のロボットでもありません。

「これ、本当に必要?」

という小さな疑問です。

昨日まで当たり前だった作業を疑う。

ムダを見つける。

もっと良い方法を考える。

必要なら機械やロボットの力を借りる。

そして、人はもっと価値のある仕事をする。

その積み重ねによって、

より良いものを、より安く、より早くお客様へ届けられるようになる。

これこそが、製造業における改善の本質だと私は考えています。

「そんなん当たり前やろ!」

はい。

その通りです。

でも――

その当たり前を、どこまで本気で追求できるか。

そこに企業の強さが現れるのではないでしょうか。

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