「改善って何から始めればいい?」実体験から考える製造現場の改善の進め方

ものづくり

製造現場で働いていると、

「生産性を上げろ」

「可動率を上げろ」

「もっと改善しろ」

なんて言われることがあります。

……。

で、何からやればいいの?

って話ですよね。

改善というと、何かものすごいアイデアを思いついたり、最新設備を導入したりすることを想像するかもしれません。

でも、実際の改善はもっと地味です。

現場を見る。

何が起きているのかを調べる。

「なぜ?」を考える。

一つ直す。

それでもダメなら、もう一度現場を見る。

この繰り返しです。

今回は、私が以前担当していた生産ラインで実際に行った外観検査工程の作業改善を例に、製造現場で改善をどう進めていけばいいのかを考えてみます。

始まりは「ラインの可動率が上がらない」という相談だった

今回の改善は、

「ラインの可動率が上がらない」

という現場からの相談から始まりました。

可動率が上がらないといっても、原因はいくらでも考えられます。

設備が頻繁に停止しているのか。

チョコ停が多いのか。

部品供給が間に合っていないのか。

作業がサイクルタイムに入っていないのか。

ここでいきなり対策を考えてはいけません。

まず必要なのは、

「どこで何が起きているのか?」

を把握することです。

まずは問題が起きている工程を探した

現状を調査したところ、ある工程で作業遅れが頻発していることが分かりました。

それが外観検査工程でした。

ここで重要なのは、

「外観検査工程で遅れている」=「外観検査をしている作業者が遅い」

ではないということです。

この段階で分かっているのは、

「この工程で何かが起きている」

ということだけです。

では、なぜ遅れているのか?

ここからさらに現場を見ていきました。

まず「遅れていること」を見えるようにした

外観検査工程を確認して最初に気付いたのが、

作業時間を測るタイマーがない

ということでした。

作業者からすると、自分の作業がサイクルタイムに対して遅れているのかどうかすら分からない状態です。

そこで最初に行ったのが、

指定時間以内に作業が終わらなければブザーが鳴るタイマーの設置

でした。

すると――

毎サイクル、ブザーが鳴る。

慢性的に作業遅れが発生していることが、ここで初めて見えるようになりました。

改善する前に「異常を見えるようにする」

タイマーを付けただけなので、この時点では何も改善されていません。

でも、これが重要でした。

改善しようにも、そもそも何が起きているのか分からなければ対策のしようがありません。

まず異常を見えるようにする。

そして、

正常なのか、異常なのかを誰でも判断できる状態にする。

これが今回の改善のスタートでした。

「作業者が遅い」で終わらせない

毎サイクル作業が遅れている。

ここだけを見ると、

「もっと早く作業してもらえばいい」

となってしまうかもしれません。

でも、私はここで一つ疑問を持ちました。

本当に作業者が遅いのか?

それとも、

そもそも設定されている検査時間がおかしいのか?

これを確認する必要があります。

検査項目と設定時間を全部洗い出した

そこで、もともと設定されていた検査項目を洗い出し、それぞれの検査項目に設定されている時間原単位を確認しました。

すると、いくつか問題が見つかりました。

まず、本来設定されている検査項目にはない箇所まで、製造側が自主的に確認していることが分かりました。

「なんでここまで見てるの?」

と確認すると、理由は、

後工程から指摘されるから。

なるほど。

現場側にも、追加で確認している理由があったわけです。

さらに時間原単位について調べてみると、こちらにも問題がありました。

設定されている時間内にすべての作業を終わらせようとすると、

そもそもしっかり検査することができない。

つまり、

「作業者が遅い」

だけの問題ではなかったのです。

改善①「その作業、本当に必要?」を考える

そこで最初に行った改善が、

確認不要な検査項目の削除

です。

もちろん、何でも削ればいいわけではありません。

必要な検査は残す。

不要な確認はやめる。

そして、実際の検査内容に合わせて必要時間を整理しました。

さらに、

確認する部位に合わせてタイマーを設定

することで、作業のラップタイムを安定させるようにしました。

これでかなり良くなりました。

……が。

まだCTに入りませんでした。

それでもCTに入らない。じゃあ次は何を見る?

検査内容を整理した。

時間設定も見直した。

それでもCT未達。

だったら、まだどこかに原因があります。

もう一度作業を観察しました。

そこで見えてきたのが、

検査そのものではなく、その前後に行っている付帯作業のムダ

でした。

改善② 小さな動作のムダを徹底的に減らす

一つひとつの動作を見てみると、

「ここまで手を伸ばす必要ある?」

「なんで毎回ここまで取りに行くの?」

「このボタン、この位置じゃないとダメ?」

という小さなムダがいくつもありました。

そこで、作業環境を見直しました。

道具の取り出し・返却場所を近くする

まず、検査で使用する道具の配置を変更。

作業者ができるだけ余計な移動をしなくても済むよう、取り出し場所と返却場所を作業位置の近くへ移動しました。

道具の高さを自然に手が届く位置へ

距離だけではありません。

道具を置く高さも見直しました。

かがむ。

腕を大きく伸ばす。

毎回こうした動作が発生すれば、一回ではわずかな時間でも、何百サイクルと繰り返すことで大きなロスになります。

そこで、

自然に手を伸ばせば取れる位置

へ変更しました。

押しボタンを作業順に並べる

測定完了時に操作する押しボタンについても配置を変更しました。

上から順番に作業を進めれば、そのまま順番にボタンを押せる。

さらに、できるだけ腕の近くで操作できる。

作業者が考えたり、余計に腕を動かしたりしなくても、

作業の流れのまま操作できる配置

にしました。

ボルト小箱の配置も見直す

取り付けに使用するボルトの小箱についても配置を変更。

これも一回の動作だけを見れば大した改善ではありません。

しかし、生産ラインでは同じ作業を何度も繰り返します。

だからこそ、

数秒、数十センチのムダをバカにしてはいけません。

改善③「2度見・3度見」を作業者のせいにしない

さらに作業を観察すると、もう一つ気になる動きがありました。

検査部位を一度確認したあと、

もう一度見る。

さらに角度を変えてもう一度見る。

2度見、3度見が発生していました。

これも時間がかかります。

でも、

「ちゃんと一回で確認してください」

で終わらせてはいけません。

なぜ何回も見る必要があるのか?

実際に確認してみると、

検査部位そのものが見づらかった。

そこで、検査に使用している照明器具の色味を変更しました。

検査部位を見やすくすることで、2度見・3度見そのものを減らす。

つまり、

人の動きがおかしいとき、人を直す前に環境を疑う。

これも現場改善では非常に重要な考え方だと思います。

結果、作業がCTに入るようになった

ここまで改善した結果、

外観検査工程の作業がCT内に収まるようになりました。

そして、それまで発生していた作業遅れによるライン停滞も解消しました。

今回行ったことを振り返ってみると、ものすごい設備を導入したわけではありません。

タイマーを付けた。

検査項目を見直した。

道具を近くへ置いた。

高さを変えた。

ボタンの位置を変えた。

ボルト箱の位置を変えた。

照明を変えた。

一つひとつを見ると、

ものすごく地味です。

でも、その地味な改善を積み重ねることで、ライン全体の問題を解消することができました。

この経験から考える「改善の進め方」

今回の改善を改めて整理すると、次のような流れになります。

① 問題が起きている場所を特定する

↓

② 問題を見えるようにする

↓

③ 本当の原因を調べる

↓

④「その作業、本当に必要?」と疑う

↓

⑤ 小さな動作のムダを減らす

↓

⑥ 人だけでなく作業環境も疑う

↓

⑦ 改善後の結果を確認する

↓

⑧ まだダメなら、もう一度現場を見る

大切なのは、

最初から答えを決めつけないこと

だと思います。

今回も、最初から「道具の位置を変えよう」と考えていたわけではありません。

ましてや、

「外観検査の作業者が遅いから頑張ってもらおう」

でもありません。

現場を見る。

問題を見えるようにする。

原因を調べる。

一つ直す。

まだダメなら、また見る。

それを繰り返した結果として、最終的にCTを達成できました。

改善とは「すごいアイデア」を出すことではない

改善という言葉を聞くと、

何か画期的なアイデアを考えなければいけない。

大きなコスト削減をしなければいけない。

最新設備を導入しなければいけない。

そんなイメージを持つかもしれません。

でも、私はそうではないと思っています。

今回行った改善のほとんどは、小さなものです。

それでも、

「なぜ遅れている?」

「なぜこの作業をしている?」

「なぜここまで手を伸ばしている?」

「なぜ2回見る必要がある?」

と一つずつ疑問を持つことで、問題を解決することができました。

改善とは、すごいアイデアを出すことではない。

目の前で起きていることを正しく見て、「なぜ?」を一つずつ潰していくこと。

そして改善したら、また現場を見る。

そこにはきっと、次の「なぜ?」があります。

前回の記事で書いた、

「より良いものを、より安く」

という当たり前を実現するために必要なのは、こうした小さな改善の積み重ねなのだと思います。

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